「Blue Velvet」と言えば、アメリカのポップス歌手ボビー・ヴィントンが1963年にリリースした楽曲ですが、アメリカのヒットチャート誌のビルボードで63年9月に首位を取っております。ボビー・ヴィントンはこの「Blue Velvet」に続いてリリースした「There!I've Said It Again」が1964年1月にビルボード首位、さらに同年リリースの「Mr. Lonely」が12月にまたもビルボードで首位と二年間にヒットチャートで首位を三度も取ると言う金字塔を打ち立てているのです。
「Mr.Lonely」はFM東京(現TFM)の人気深夜番組「Jet Stream」のテーマソングとして現在も放送中です。
プレスリーやポールアンカ、二ールセダカほど日本では知名度は高くありませんがボビー・ヴィントンは彼らに劣らぬ大きな実績を残しています。 ボビー・ヴィントンが「There! I've Said It Again」でビルボードで首位を取った1964年の1月の翌2月ビートルズの「抱きしめたい(I Want to Hold Your Hand)」がビルボードの首位を獲得、以後ビートルズ旋風がアメリカ全土に吹き荒れ、2ヶ月後の4月4日付けのビルボード誌では1位「Can't Buy Me Love」、2位「Twist and Shout」、3位「She Loves you」、4位「I Want to Hold Your Hand」、5位「Please Please Me」と何と1位から5位までをビートルズが独占しております。ポップ・ミュージック界の既成概念が根底から覆され、ミュージック・シーンが地球レベルで革命的に塗り替えられた瞬間ですね。
そういう意味では、ボビー・ヴィントンは良き時代の最後のアメリカンポップス・スターと言えましょう。
このボビー・ヴィントンの「Blue Velvet」に触発されて、映画監督の名匠デヴィッド・リンチが1986年に映画「Blue Velvet」を製作し、主演はかの映画史上に残る大女優イングリッド・バーグマンの愛娘イサべラ・ロッセリーニが演じました。
この映画はのどかな田舎町を舞台に暴力的で退廃的な人間模様を描き、ニュータイプのミステリー映画として話題を呼びましたが、不法侵入、覗き見、性的虐待の描写、暴力シーンとセンセーショナルな内容に公開当時は論争を巻き起こし、非難の声も多く寄せられたのです。後に名作と評価され多くの映画賞を受賞しましたが、「後世が歴史を評価する」という好例ですね。
どうでしょうか、半世紀前のアメリカンポップスの一曲でこんなに語れてしまうということは驚くような話ではありませんか。
宮殿では十幾つかの魅惑の部屋があなたを待っています。
「Moonlight In Vermont」、「Autmun In Newyork」、「A Foggy Day」、「On a Clear Day」といったスタンダード中のスタンダードあり、懐かしの50年代ポップスの「Tennessee Waltz」あり、はたまた映画のテーマ曲「It Might as well be Spring」、「A Man and a Woman」ありと、輪が手ぐすねひいて設定したデザイニングが妖しいオーラを放っております。 鈴木輪の身上は、私見で誤解を恐れず敢えて言えば「抑制の効いたエロス」といったところではないでしょうか。
28年前レコード会社在籍のわたしが輪を預かった時、彼女のソウルフルな歌唱はR&Bに向いてると見当をつけていました。しかし、輪はその後の人生の試練を乗り越えていく過程で、持ち前だったたぎるマグマ的な歌唱を「夜のためいき」のようなSophisticatedなJAZZの世界に昇華していきました。あるいは美人でグラマラスな輪が、ShoutするようなR&Bを手がけるとToo Muchになると本能的にバランス感覚を働かせたのかも知れません。長い付き合いの中で、何故かそのあたりは聞きそびれておりますが、聞いたところでこの魔女は「ヒ・ミ・ツ!」とか言ってはぐらかしそうです。まぁ、企業秘密みたいなものですものね。
秋の夜長を「Blue Velvet」のミュージック・イリュージョンとも言える魔力に身をまかせて酔いしれることは、「今でしょ!」、「じぇじぇ」、「倍返しだ!」と何やらかまびすしい今年の喧騒から離れて、ひと時を心と身体を休ませるのに効き目があると思います。それが「リンノミクス効果」(笑)です。
それにしてもJAZZ魔女鈴木輪はどこに向かっているのでしょう。シンガーとして目指しているのはエラ超え、サラ超え、それともビリー超え?何を企んでいるのか、時々輪のPeformanceのすべてがFakeに思えるのです。
あなたに見えてる鈴木輪はまだまだ真の輪ではないでしょう。想定外の進化を続けるJAZZYな魔女鈴木輪からくれぐれも目を離してはいけません。